記憶が消えてしまわないうちに・・・。

会いたかった人にお会いしてきました。

都島の駅のホームを出ると
一番に目に飛び込んできた人がその人でした。
淡いピンクのコートで髪は栗色
あれ？ちょっと違う感じかな～と・・・
81歳といえば・・・、
コーラス・英会話・朗読・ウクレレ・フラや
今でも社会貢献ととても元気な方でした。
いい意味で想像以上だったことに感謝がこみ上げます。

お元気でいてくださってありがとうございます。

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会うなり、お聞きしたいことが多すぎます。
工業高校や駒つなぎの楠の説明もそこそこにして
お店に入ってお話をお聞きしました。

竹中三子さんのお父様は
 昭和17年に徴用で召集されていたインドネシアのハルマヘラ島から
21年2月に和歌山田辺港に帰ってこられました。

無事で帰れたのですが現地からマラリアに罹っていて
高熱に苦しむ日々だったそうです。
昭和23年にマラリアの薬キニーネが使われるまでは
40度の熱が出て、仕事先から帰ってくることもしばしばありました。
目も黄色く黄疸もでていました。
そんな辛い毎日でも、娘のことを気遣う我慢強い優しいお父さまでした。

明治44年のお生まれ、68歳でがんで亡くなられました。

私の父は
昭和17年に満州から南方へ、ハルマヘラから帰ってきたのは
21年6月でした。肺結核とマラリアのために病院船氷川丸で
山口県大竹に帰還。そのまま国立病院に収容されました。
数か月後に帰郷した時、村では幽霊騒ぎが起こったそうです。

同じく68歳で心不全で逝去しました。

どちらの父も
マラリアの後遺症に苦しみ、今の世でいう長生きではありませんでした。
極限で生きて、酷使した命・・・
長生きはできなかったのです。

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さて、ハルマヘラでのことです。
三子さんがお父さまから聞いておられたのは
ハルマヘラは平和な島だったそうです。

米軍の飛び石作戦で爆撃から逃れた島でした。
他に読んだ手記にも、爆撃は最初にあっただけで
そのあとは、セレベス方面爆撃の帰りに
爆弾を始末していくことがあっただけとありました。

お父さまは
若くから大工修行をなさっていて
すでに大工の棟梁をなさっていたということで17年に徴用
ハルマヘラでは
軍の官舎（小屋？）の設営や修理をする技工で
私の父は、兵器の修理などをする鍛工でした。

戦闘に参加するわけではなかったそうです。

ですから、現地の人とは仲良くなって
塩など軍からの物資と食料を交換したりしていたのですが
どんどん現地の人の食料も乏しくなっていきました。
米軍の爆撃にあい物資は断たれてしまいます。

お父さまたちは
蛇やトカゲやネズミなど食べられるものは何でも食べた。
それが食べられなかった人は
栄養失調になり、みな餓死していった。

平穏な島だったが、いい思い出は全くない。
餓死していった人の姿が
何十年経っても目に焼き付いたままで
どう亡くなっていったかは、頭から去ることはなかったそうです。

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父の兵歴簿を辿ると
重要な作戦の戦地となった場所
終戦の1年前、19年はワシレにいます。
8月にワシレは大空襲で物資を失い
モロタイ島には米軍上陸
ハルマヘラは無縁孤立となっています。
すべての物資が断たれた状態となっています。

どちらの父も
病と飢餓に苦しむ途方もなく長く過酷な日々だったようです。

父が話していたことがあります。
ある作戦に参加して
ハルマヘラに集合した大船団に乗る予定だったのが
マラリアで高熱を出して乗れなかった。
その船団は玉砕しました。

マラリアで命を落としかけて、マラリアで命拾いしたのです。

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それ以上は語りませんでした。

どちらの父もそうだったようです。

思い出したくない。
話したら戦友たちの最期のあの顔が蘇るから言いたくない。
どんどん、なかったことのように日々を生きる。

1割の人しか生還できなかった島
戦死したのはそのうちの2割
8割が餓死、病死だった。
どれほど口惜しかったことでしょう。

魂は帰ってきて来られたのでしょうか。

お話をしていると
父たちが見ているような気がしました。

絶対出会わない二人が出会う。
そこにはどんな繋がりがあったのでしょうか。
まだ明らかには解りません。
でも、きっとわかるときが来るのでしょうね。

会えたこと、それだけで有難いこと。

こうしていることが供養になるのでしょうね。
あったかな時間が流れました。

これからもずっと何回も会いたいと思いました。

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竹中三子さんは

今でも、20年6月の大阪大空襲のトラウマを抱えておられます。

その時の、空襲警報のサイレンが鳴るやいなややってきた
100機からの戦闘機のゴーッという大爆音。
ある日、お母さまと
お父様が持って帰られた同期の兵隊さんの遺品を奈良まで届けたそうです。
近鉄電車が生駒のトンネルに入ったときの音が
戦闘機の爆音と同じ音に聞こえてそれは怖かったこと・・・
同じ道を通って帰ることに抵抗をしたがどうにもならなかったと・・・

あの日、泣いていたのは
小学1年生のみつこちゃんだったのかもしれません。

そして、空襲のあの爆音も生駒のトンネルの音も

70年経っても、今もはっきりと魂に刻まれている。

地域の小学校ではご自分の空襲体験などのお話をされています。

九死に一生を得られて生きてこられました。
そのことに、心からありがとうございます。

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お父さまに聞いたことがあるそうです。
「ハルマヘラにもう一度行きたいか」と
「ええ想い出はないけれど、あの海はまた見てみたいな～」と

父はどうだったんだろう。
満州にはもう一度行きたいと言っていた。
ハルマヘラには行きたかった？どうだったんだろう？

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事実はどうだったのでしょうか？

忘れたいと思った人たちが問わず語りした戦争の記憶
事実とは違っているところは数々あるでしょう。

個人の記憶です。
そのまた、聞き語りですから・・・
真実、事実、史実のすべてがこのままではないでしょう。